業界、職種、昇進。 新卒の人たちに知って貰いたい、キャリアを考える3つの軸

社会人になって十数年ですが、新卒の時に本当に知っていれば良かったと思うのが、キャリア形成の基本戦略です。当時は当時で、いろいろな本を読んで考え方を学んではいたのですが、振り返ってみると、どうにも腹に落ちていなかったというのが正直なところです。

まあ、学生は実務経験がないので、どうしても思い込んだイメージ先行なので仕方のない部分があるのですが。

もし、大学3年生の僕に、今の僕がキャリア形成の基本戦略を教えるとしたら、何を伝えるのか、ちょっと考えてみました。

 

キャリア形成の3軸は、業界、職種、昇進である

まず、最初に教えたいことは、キャリア形成の3つの軸です。それは、業界、職種、昇進ということになります。この3つは、それぞれ密接に関わっていて、図に表すと3次元の立方体になります。

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業界は、産業のカテゴリで、細分化していくと「会社」という単位になります。つまり「どこで働くか」という質問に答えるものになります。

 

職種は、その業界や会社の中で「自分は何をするのか」という答えに関わるものです。職種には、お金を稼ぐことに直結する仕事をする「ライン」と呼ばれる種類の人たちと、そのラインをバックアップする「スタッフ」と呼ばれる人たちに分かれます。

 

そして最後の昇進が、その会社の職種で、どのくらいの地位にいるのか、ということです。通常、日本の会社では、会長、社長、専務、常務、事業部長、課長、主任といったヒエラルキーが会社の中に存在しています。

 

キャリア形成を考える上では、この3つの軸によって構成されている立方体を、どのように動いていくのかを考える必要があります。中でも、業界と職種のマトリックスを理解することは、非常に大切だと思います。

 

業界と職種のマトリックス

これが、業界と職種のマトリックスです。本当は業界も職種ももっといろいろあるのですが、こんなイメージです。どこで、何をするのか、という表ですね。

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新卒で就職する、ということは、このマトリックスのどこかのボックスに、自分が位置付けられるということです。

キャリア、というのは連動しているため、最初のキャリアは次のキャリアに繋がり、次のキャリアはさらにその先のキャリアに繋がっていきます。

新卒で入社する会社が大切だ、というのはこうした理由もあると思います。

 

スタッフ職は業界を飛び越えるのが簡単

先ほど、ラインとスタッフについて簡単に説明をしましたが、スタッフ職の代表的な職種は人事や経理です。これらスタッフ職の人材は、転職をするときには、比較的簡単に業種を飛び越えることができます。

例えば、私の友人は最近まで外資系メーカーの人事部に勤務していましたが、突然小売業の人事部に転職をしました。全く違う業界ですが、業界の違いが転職のハードルにならなかったのです。

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理由は簡単で、経理や人事の仕事は、業界によって多少の違いはあるといえど、基本的な仕事内容が変わらないからです。どの会社の経理も、同じようなルールの元で仕事を進めていますし、人事部も同様です。

 

ライン系は横滑りでキャリアを広げるべし

一方、ライン系は業界を越えるハードルはスタッフよりも高く、近い業界、近い職種に横滑りしていくのがよくあるパターンです。

例えば、僕の幼馴染に天才的な男がいるのですが、彼の場合は新卒で某日系IT企業の法人営業を経験した後、MBAを優秀な成績で卒業。その後外資系IT企業のマーケティング職につきました。

営業とマーケティングはかなり密接に関わっていますから、営業からマーケティング、というのはよくあるパターンです。

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僕の幼馴染は、その後さらに昇進し、現在は米国本社でグローバルマーケティングマネージャーとして世界を飛び回っています。

 

ラインからスタッフへの移動は、同じ会社なら可能性がある

ラインからスタッフへの移動は、転職の場合はかなりハードルが高くなります。なぜなら、転職の場合は往々にして即戦力を求めているからです。

しかし、同じ会社であれば話は変わってきます。同じ会社の場合は、人柄も能力も実績も全てわかっていますから、中長期的な視点に立って、会社にとって有益だと判断されれば、ラインからスタッフへ移動することもあります。

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例えば、日系化学メーカーに勤務している僕の友人は、数年前に営業から人事部に移動になりました。一部の日系企業では、ラインの仕事を数年経験した後、人事部で数年過ごし、管理職になっていく、というのが出世コースのようです。

 

業界も職種も異なるキャリアチェンジは日本では難しい

米国のMBAプログラムに行って最も驚いたことの一つは、クラスメイトたちのMBA入学前と卒業後の進路のバリエーションの多さです。

例えば、ある女性のクラスメイトは、大学では声楽を専攻し、音楽の博士号も持っていました。MBAに入る前はアイダホの大学で声楽を教えていましたがリストラ。MBAプログラムに入って組織行動学を専攻し、卒業後の進路はバンク・オブ・アメリカの人事部です。

日本ではちょっと考えられないようなキャリアチェンジですが、こうした業界も職種も全く違うキャリアの道が開かれる例は米国のMBAではたくさんあります。

 

しかし、業界も職種も異なるこうしたキャリアチェンジは日本では難しいのが現状だと思います。理由は、日本は職歴重視で即戦力が求められるからです。

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アメリカでも即戦力が求めらえるのだと思いますが、アメリカの雇用契約の基本は「at Will」と呼ばれるもので、雇用主が雇う意思がなくなれば、簡単にクビを切ることができます。つまり、「使えなければ切ればいい」とアメリカの雇用主は考えているわけです。

日本の場合は、労働法によって厳しく労働者が守られているため、一度正社員として雇ったら本当に辞めてもらうのが大変です。

 

研究・技術職は潰しがきくかどうか

難しいのが、研究・技術職です。研究・技術職は、持っている技術は専門知識がどれだけ汎用性があるかが鍵となります。IT関連技術の場合はかなり汎用性があり、システム開発やネットワーク構築などは、どんな業界でも同じような技術力が求められます。

僕の友人の一人は、最近IT業界から自動車メーカーに転職しました。何をしているのか尋ねると、車を制御するソフトウェアの品質チェックとのことで、業界は違っても、全く同じスキルを使っています。

しかし、研究職は分野によっては特定の業界の、特定の会社でしか原子力などはよい例だと思います。こうしたニッチな領域はいわゆる「潰しがきかない」分野で、転職先の数はかなり限られてしまいます。

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