マーケティングという言葉ほど曖昧でいい加減な言葉はない

僕はもうすぐ40歳になりますが、社会人として生きてきた中で、初対面の人から

「どんな仕事をしているんですか?」

かと尋ねられて

「マーケティングの仕事をしています」

と答え続けてきました。

 

しかし、つくづく思います。

マーケティングという言葉ほど曖昧でいい加減な言葉はない、と。

 

マーケティングという言葉に強い違和感を持ったのは新卒の時

僕は新卒の会社で、ERPパッケージソフトの開発会社にいました。ビジネスモデルは直販なしの代理店販売です。

その代理店の一社の窓口だったAさんという人がいて、その人の名刺には「マーケティング事業部」なる部署名が書かれていました。その人がある日突然その会社を辞めると連絡を貰い、上司と一緒に送別会として一席設けることになりました。

Aさんは、その送別会の席で、お酒を飲みながらポロリと辞める会社の愚痴を漏らしました。

「マーケティング事業部なんて名ばかりで、実際には雑用押し付けられ部署ですよ」

マーケティングという言葉に漠然とした憧れを抱いていた僕は、このAさんの言葉に大きなショックを受けました。マーケティングという言葉そのものに違和感を覚えるようになりました。

 

MBAのクラスでその違和感の正体が分かった

当時、マーケティングについてきちんとした勉強をしたことがなかった僕ですが、その後米国の中堅MBAプログラムに留学し、そこである授業を受けました。

「セールスマネジメント」というクラスです。教授はローズ教授という人で、マーケティングとアントレプレナーシップの教授でした。大学のサイトを見たらまだディレクトリーにプロフィールが掲載されていたので、現役のようです。

f:id:kenjiokb:20070602061102j:plain

このクラスで何を学んだのかもうほとんど忘却の彼方ですが、一つだけよく覚えているのが、B2CとB2Bのそれぞれの購買行動において、営業とマーケティングの果たす貢献度の比重が違う、という話でした。

簡単に図解すると以下のようになります。

f:id:kenjiokb:20170627051654p:plain

教授の研究によると、何かを販売する過程において、B2C(一般消費者向け)のビジネスにおいてはマーケティング活動が販売に大きな影響を及ぼす反面、B2B(法人向け)ビジネスでは結局営業力がマーケティングよりも大きな影響がある、というものでした。

新卒の会社はもちろんB2B、しかも数百万〜数千万円するソフトウェアです。恐らく営業が花形で、マーケティングの部署の実態は「営業支援部」だったのでしょう。

マーケティングの定義や機能は人や会社によって違いすぎる

何が言いたいのかというと、マーケティングの定義や機能は人は会社によって違いすぎる、ということです。

営業は理解するのがとても簡単ですが、マーケティングは営業活動以外の販売に関わるすべての要素がぶち込まれているように感じます。

f:id:kenjiokb:20170627054032p:plain

実際には営業以外の販売活動を分解すると、実に多岐に渡ります。広告宣伝、市場調査、価格決定、ブランディング、商品企画、販路開拓、サイトやソーシャルメディアなどの運営、セミナーやプリセールスなど本当にいろいろです。

f:id:kenjiokb:20170627054959p:plain

マーケティングの仕事に就こうと思って就職や転職活動をしてる方がいれば、面接の質問で面接官に次の質問を聞いてみてください。

「御社にとってのマーケティングとは何ですか?どのような機能を果たしていますか?」

いろいろな会社に尋ねると実に多用な答えが帰ってくるのではないかと思います。

曖昧だからこそ、自分なりの定義を持つことが大切ではないか

で、今回の記事の結論です。

曖昧だからこそ、自分なりのマーケティングの定義を持つことが大切だと僕は考えています。

書籍を紐解けば、ドラッカーやコトラー、ケビンケラーなど様々な研究者たちの考え出した定義はあります。

しかし、非常に興味深いことに、実際にマーケティングの仕事に従事している人たちの日々の頭の中では、こうした定義はあまり意識されていないのが現状ではないかと思います。少なくとも、僕の働いてきた職場では、誰かの口から聞いたことがありません。

 自分なりの定義を持てば、曖昧でふわふわしたものに、一本硬い柱を打ち立てることができます。こうした柱は自分のキャリアを築く上でのストーリーラインを描く上でとても助けになります。

ちなみに、僕にとってのマーケティングの定義は

「売れる仕組みづくりをすること」

です。

「売れる仕組みづくり」というテーマでは、前職のプロバイダーで見聞きしたことが非常に衝撃的でしたが、この話はまた別のエントリで書きたいと思います。